北海道苫小牧市で発覚した小学校職員による約470万円の着服事件。
このニュースは「教育現場の信頼」が、いかに簡単に崩れうるかを私たちに突きつけています。
今回は事件の詳細、背景、教育委員会の対応、そして再発防止に向けた課題を深掘りし、専門的かつ客観的な視点でお届けします。
事件の概要とその経緯

発覚したのは2年半にわたる着服行為
北海道苫小牧市内の市立小学校に勤務していた50代の男性事務職員が、2022年10月から2025年3月までの約2年半にわたり、PTA会費や教材費など、保護者から預かった資金を不正に着服していたことが明らかになりました。
総額は約470万円にのぼります。
この事務職員は経理業務を一人で担当しており、2025年3月24日以降、無断欠勤を始めました。
その後、取引業者から「未払い」の連絡や請求書が届いたことで学校側が調査を開始し、帳簿や預金口座の確認を行った結果、不正な引き出しの存在が判明しました。
着服の手口と動機

保護者の信頼を逆手に取った金銭管理
不正行為は、学校が保護者から集金するPTA会費や教材費などの一部を、事務職員が自身の管理する口座を通じて何度も不正に引き出すという手口でした。
金銭の出入りが一人の職員の管理に委ねられていたため、外部からの監視がほぼ不可能だったという構造的問題も明らかになりました。
本人は、着服した資金を「自分の借金返済に使った」と説明しており、すでに全額を弁済しています。
市と教育委員会の対応と判断

刑事告訴せず、説明会で信頼回復へ
苫小牧市教育委員会は、事務職員がすでに全額弁済していることや反省の態度を示していることなどを踏まえ、今回の件について刑事告訴はしない方針を示しました。
一方で、保護者からは不安と不満の声が上がっており、教育委員会は説明会の開催を通じて、事件の経緯や再発防止策を明示する予定です。
事件の背景にある構造的課題

職員の削減と煩雑な業務の現実
今回の事件の背景には、学校事務の人員削減という構造的な問題があります。
かつては二人体制だった事務業務が一人に減らされたことにより、経理処理のチェックが効かず、業務の煩雑さに紛れて不正が行われても発見が遅れる事態となりました。
教育委員会は、今後の対策として以下の点に取り組む方針です。
- 経理業務の複数人管理制への移行
- 定期的な外部監査の導入
- 会計書類のデジタル化と透明性の確保
苫小牧市という地域とその教育環境
苫小牧市は北海道の南西部に位置し、港湾や製紙業を中心とする工業都市です。
人口は約17万人。市内には複数の小中学校があり、地域に根ざした教育活動が行われています。
このような都市の小学校での不正事件は、地域社会の信頼を揺るがし、保護者や住民の不安を引き起こすものです。
教育現場に求められるガバナンスの再構築
今回の事件は、単なる個人の不正行為という枠を超え、教育機関そのもののガバナンス体制の脆弱さを浮き彫りにしました。
公立学校は公金を取り扱う機関でありながら、その管理体制が旧態依然とした仕組みに依存している場合が少なくありません。
特に経理処理に関しては、複数人によるチェック体制の不備や、外部監査の形骸化が問題となっています。
ガバナンスの強化には、学校現場における内部統制の見直しだけでなく、教育委員会や自治体による定期的な指導・監査体制の構築が不可欠です。
さらに、保護者や地域住民が学校運営に積極的に関与できるような仕組み、たとえばPTA会計の公開や会議録の共有なども、不正防止につながる効果的な手段となります。
市民による監視と参加は、教育の公共性を支える土台です。
信頼回復には時間がかかるかもしれませんが、ガバナンスの再構築こそが、再発防止と安心できる教育環境づくりの第一歩となるでしょう。
教育現場が直面する今後の課題

再発防止へ、透明性と協働の仕組みづくり
今回の事件は、教育現場における「信頼性」と「透明性」の重要性を改めて浮き彫りにしました。
業務の効率化や人員体制の見直しが急務であることはもちろんですが、地域と学校が一体となって監視し、サポートする仕組みの構築も欠かせません。
保護者や地域住民と連携し、学校運営に関する情報共有や透明性の高い会計報告が常態化することで、不正を防止する土壌が育まれるのです。
まとめ
- 苫小牧市の小学校職員が約470万円を着服しました。
- 事件は業者からの未払い連絡で発覚しました。
- 着服金は借金返済に使用されました。
- 事務職員はすでに全額返済し、PTAは刑事告訴をしない方針です。
- 人員削減によるチェック体制の不備が要因です。
- 今後は説明会や再発防止策により信頼回復を図ります。