2025年4月に報じられた事件では、 米国系医療機器メーカー(東京都中央区)の営業担当者が、大学病院などで手術に立ち会い、資格を持たずにX線装置を操作していたことが発覚しました。
この事例は医療業界における法的・倫理的な問題を引き起こし、医療機関の信頼性や患者の安全に大きな影響を与えています。
本記事では、この事件における問題点と法的背景、影響について詳しく解説し、医療現場における適切な対応方法について考察します。
事件の概要と背景
この会社は、米国企業の日本法人「ニューベイシブジャパン」で、背骨の手術で使われるインプラント(体内に埋め込む医療機器)を製造・販売している会社です。
主に脊椎手術の際、背骨を安定させたり固定したりするためのスクリューやロッドなどの製品を提供しています。

2025年4月、米国系の医療機器メーカーの営業担当者が大学病院などで手術に立ち会い、資格を持たないままX線装置を操作していたという事実が報道されました。
営業担当者は医師の手術を補助する形でX線照射を行ったとされていますが、この行為は医療法や放射線障害防止法に違反しており、重大な問題が指摘されています。
営業担当者が行ったX線照射は、営業活動の一環として行われていたとされ、製品の導入や販売促進を目的とした行為でした。
しかし、医療現場では医師や放射線技師などの有資格者によってX線が操作されるべきであり、無資格者によるX線操作は法的にも非常に危険な行為です。
放射線障害防止法と医療法の遵守
X線装置の操作には、放射線技師や医師など、特定の資格を有する専門家が必要です。
放射線障害防止法では、X線を使う医療行為において無資格者が放射線を照射することを禁じています。
また、医療法でも、医療行為において適切な資格を持つ者が行動することが求められています。
これに違反した場合、法律に基づく罰則が科せられる可能性があります。
無資格者によるX線照射は、放射線被ばくの管理や安全対策が不十分になる恐れがあり、患者や医療スタッフに対して大きな健康リスクを引き起こす可能性があります。
放射線技師は放射線の安全管理に関して高度な知識と技術を有しているため、その役割を無資格者が担うことは、患者の命に関わる重大な問題となります。
営業担当者の職務範囲の逸脱
医療機器営業担当者は製品の説明や使用方法の指導、導入後のサポートなどを行う役割が主な業務です。
医療機器営業担当者は医療行為には関与せず、医療現場での直接的な介入は避けるべきです。
無資格者が手術に立ち会い、X線照射に関与することは業務範囲を逸脱しており、医療の専門家でない者が医療行為を行うことは許されません。
営業担当者の役割として期待されるのは、製品に関する技術的なアドバイスやサポートを行うことです。
X線装置の操作や照射を直接行うことはその職務を大きく超えた行為であり、医療現場での適切な役割分担が重要です。
無資格者によるX線照射が患者や医療現場に与える影響

患者への健康リスク
X線を使用する際には、適切な被ばく量の管理が必要です。無資格者がX線を操作すると、照射量や照射時間の調整が不適切になり、過剰な被ばくを引き起こす恐れがあります。
放射線被ばくは細胞や組織に損傷を与え、特に長期間にわたる影響が現れる可能性があるため、過度な被ばくは深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
医療スタッフへのリスク

X線装置は、患者だけでなく、手術に関わる医療スタッフにも影響を与える可能性があります。
無資格者が操作することで、適切な安全対策が講じられない場合、医療スタッフも過剰に放射線に曝されるリスクがあります。
医療スタッフが放射線管理に不安を感じることで、職場の士気にも悪影響を与え、医療現場全体の効率や信頼性を低下させることにもつながります。
医療機関の信頼性への影響
無資格者によるX線照射が報じられることで、医療機関の信頼性が損なわれることになります。
医療機関は患者の安全を最優先に考える場所であるべきですが、このような事件が発覚すると、患者やその家族、また社会全体から信頼を失うことになります。
医療機関の信頼性が低下すれば、患者がその施設を選ばなくなる可能性も高くなります。
医療機器メーカーと医療機関の役割

この事件においては、医療機器メーカーと医療機関がそれぞれ果たすべき役割についても再認識する必要があります。
医療機器メーカーの責任
医療機器メーカーは、製品が安全に使用されることを保証する責任があります。
営業担当者が無資格でX線操作を行うことは、メーカーとしての倫理に反する行為です。
メーカーは営業担当者に対して適切な教育と指導を行い、製品の安全性を確保するために必要な対策を講じるべきです。
製品に関する知識や使用方法を指導するだけでなく、法的な枠組みを遵守させることが求められます。
医療機関の責任
医療機関は、患者の安全を守るために、資格を持つ専門家が医療行為を行うよう徹底しなければなりません。
医師や放射線技師などが適切にX線を操作できる体制を整えることが求められます。
また、医療機関は医療機器メーカーと適切に連携し、機器の導入や操作に関するガイドラインを明確にする必要があります。
医療機関は法令遵守を徹底し、患者や医療スタッフの安全を最優先に考えることが求められます。
まとめ
- 無資格者によるX線操作は法令違反であり、患者や医療スタッフの健康リスクを高めます。
- 医療機器営業担当者は、医療行為に直接関与せず、技術的なサポートに徹するべきです。
- 医療機関は、資格を持つ専門家による医療行為を徹底し、患者の安全を最優先にする。
- 放射線障害防止法や医療法に基づき、X線操作は有資格者に限定されるべきです。
- 医療機関と医療機器メーカーは、適切な連携と法令遵守を徹底することが求められます。