- 貯蓄5,000万円、住宅ローン完済済みの65歳男性がSNS型投資詐欺の餌食に
- 「未納料金」の偽メールから、偽の金融機関サイトへ誘導される手口
- 元経理職という自負や「コンプライアンス」への恐怖を巧妙に突かれた
- 3ヶ月間で約1,500万円を送金し、親の介護費用も重なり破産危機へ
- 65歳以上の高齢者が特殊詐欺被害の約7割を占める深刻な現状
1. 概要:安定した老後から一転、破産危機への転落
大手企業の経理部門で定年まで勤め上げた65歳の男性は、退職金と貯蓄を合わせて5,000万円の資産を保有していました。公的年金も夫婦で月20万円受給しており、住宅ローンも完済。「老後は安泰」と確信していた日常は、スマートフォンに届いた一通のメールから崩壊しました。
「資産運用に関する未納料金がある」という名目のメールから偽のログイン画面に誘導され、個人情報を入力。その後、犯人グループによる「丁寧な電話」と「偽の成功体験」により、男性は多額の資金を自ら差し出すこととなったのです。
2. 発生の背景・原因:元経理マンの「自負」が仇に
被害に遭った男性は、経理職としての長年の経験から「数字やコンプライアンスには詳しい」という強い自負がありました。犯人グループはこの心理を巧みに利用しました。
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「資金を保全する措置が必要」「マネーロンダリングの調査対象になる」といった専門用語を織り交ぜた脅しに対し、男性は知識があるがゆえにそのリスクを過大に評価してしまいました。また、最初に少額を入金した際にアプリ上で「利益」が出ているように見せかけられたことで、完全に警戒心を解いてしまったのが致命的でした。
3. 関係者の動向・コメント:被害男性の深い後悔
被害に遭った男性は、「守ろうとした資産を、自分の手で差し出していた」と、深い絶望の中にいます。特に、家族に無能だと思われたくないというプライドから、妻に相談できなかったことが被害を拡大させる要因となりました。
「年金月20万円。普通に暮らせば十分なはずの額が、今は本当に苦しい」と語る男性の言葉には、金銭的損失以上に、自らの判断ミスで人生設計を壊したことへの痛みが滲んでいます。
4. 被害状況や金額・人数:短期間で失われた2,000万円
男性が3ヶ月の間に振り込んだ総額は1,500万円にのぼります。さらに追い打ちをかけるように、地方で暮らす実父の介護施設入所一時金などが必要となり、老後資金から計2,000万円近くが消失する事態となりました。
手元に残った資金は大幅に減少し、現在は毎月の年金の半分を貯蓄の補填や介護費用に充てるという、綱渡りの生活を余儀なくされています。
5. 行政・警察・企業の対応:急増するSNS型投資詐欺
警察庁の統計によると、特殊詐欺の被害者の約7割が65歳以上の高齢者です。特に近年は「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺」の被害が急拡大しており、令和7年上半期の被害額は70代が105.5億円と最多、次いで60代が99.4億円となっています。
行政や警察は注意を呼びかけていますが、犯行グループの手口は日々巧妙化しており、実在の金融機関や有名人を装うケースも増えています。
6. 専門家の見解や分析:孤立が招く被害の連鎖
内閣府の『高齢社会白書』では、高齢者がトラブルに巻き込まれる背景に「孤立」や「家族とのコミュニケーション不足」を挙げています。
専門家は、「自分は知識があるから大丈夫」という慢心が最も危険であると指摘。詐欺師は恐怖心だけでなく、ターゲットの「有能感」や「プライド」を刺激してコントロールするため、第三者の客観的な視点(家族や公的機関への相談)が不可欠です。
7. SNS・世間の反応:「他人事ではない」という恐怖
このニュースに対し、ネット上では「自分も親が心配だ」「経理のプロでも騙されるなら、素人はどうすればいいのか」といった不安の声が多数寄せられています。
一方で、「退職金などの大金を狙うハイエナのような存在が多すぎる」と、高齢者の資産を狙う社会構造への怒りの声も目立ちます。
8. 今後の見通し・影響:老後設計における最大のリスク
今後、資産運用が推奨される社会背景の中で、投資を隠れ蓑にした詐欺はさらに増えることが予想されます。老後設計において、病気や介護だけでなく「詐欺による収奪」を最大のリスクとして組み込む必要があります。
一度失った数千万円を取り戻すことは、現役世代以上に困難です。資産を守るためには、知識を過信せず、不審な連絡があった際は即座に「188(いやや)」などの消費者ホットラインへ相談する体制を整えることが急務です。
- Q. 投資詐欺に遭わないための最大の対策は何ですか?
- A. 「必ず儲かる」「あなただけ」「至急確認を」という言葉が含まれる連絡は、まず詐欺を疑うことです。また、どんなに自信があっても、多額の資金移動をする前に家族や銀行の窓口など第三者に相談してください。
- Q. 偽の金融機関サイトをどう見分ければいいですか?
- A. メールやSNS内のURLを直接クリックせず、必ずブックマークや公式アプリ、検索エンジンから公式サイトへアクセスする習慣をつけましょう。
- Q. もし被害に遭ってしまったらどうすればいいですか?
- A. すぐに警察の専用相談窓口「#9110」や、消費者ホットライン「188」に相談してください。早期の対応が、わずかでも被害回復の可能性をつなぎます。


