地域に根ざしたスーパーの閉店が、町の暮らしに与える影響とは
長野県飯島町の中心にある「エーコープ飯島店」が、2025年4月3日に閉店しました。
長年にわたって町の暮らしを支えてきたこのスーパーの閉鎖は、単なる商業施設の喪失ではなく、地域社会に深刻な課題を投げかけています。
本記事では、閉店に至る経緯、住民への影響、行政の対応策、今後の地域づくりへの示唆について詳しく解説します。
スーパー閉店の背景にある複合的な要因
建物の老朽化と経営上の限界
エーコープ飯島店は、約50年にわたって町の中心部で営業してきたスーパーマーケットです。
しかし2019年には老朽化が進み、経営難もあって一時は閉店の危機に直面しました。
その際、町が約4000万円の補助金を投入して店舗の改修支援を行い、営業継続を後押しした経緯があります。
このように行政の支援があったにもかかわらず、根本的な経営改善には至りませんでした。
人口減少と高齢化により買い物客は年々減少し、売上は低迷。利益を出し続けるには限界がありました。
コロナ禍と物価高のダブルパンチ
加えて、新型コロナウイルスの影響で来店者数が減少し、経営環境はさらに悪化しました。
人々の生活様式が変化し、ネット通販や移動販売にシフトする中で、店舗型のスーパーは苦境に立たされました。
また、昨今の物価高騰も打撃となりました。仕入れ価格が上昇する中、地域密着型スーパーとして価格転嫁が難しく、利益率は圧迫され続けていました。
運営会社の社長の健康問題も影響
最後の引き金となったのは、運営会社の社長が体調を崩し、経営を続けることが難しくなったことです。
地元密着型の事業者にとって、経営者の健康は店舗運営に直結します。代替経営者の確保も難しい中で、閉店の決断がなされました。
買い物難民となる高齢者たちの不安と不便
徒歩圏での買い物が困難に
閉店によって、飯島町中心部には生鮮食料品を扱うスーパーが存在しなくなりました。
残るのは七久保地区の「Aコープ七久保店」のみで、中心部からは約5キロの距離があります。
徒歩での移動は現実的ではなく、自家用車を持たない高齢者にとっては、日々の買い物が極めて困難になりました。
ガソリン代や時間的負担も増加
公共交通機関も整備が十分とはいえず、代替手段がないまま日常生活の質が大きく低下しています。
タクシーや家族の送迎に頼るケースも見られますが、それが可能な世帯は限られています。
ガソリン代や移動時間など、新たな負担が住民の暮らしを圧迫しています。
行政が打ち出した対策とその限界
部局横断の対策チームを設置
飯島町は、今回の閉店を受けて庁内に複数部局を横断する対策会議を設置しました。
住民の買い物環境の維持を目的とし、代替手段の検討や情報収集、地元関係者との協議が進められています。
農協との連携と事業承継の可能性模索
店舗の所有者である地元農協と連携し、後継事業者の確保や新たな営業形態の模索も始まっています。
しかし、事業の採算性や地域の需要を見極める必要があり、実現には時間と準備が必要です。
地域スーパーの存在意義と社会的インフラの再認識
スーパーは単なる商店ではない
地方において、スーパーは単に食料品を提供するだけでなく、住民が日常的に集う「社会的な場」としての役割を持ちます。
買い物はもちろん、近所の人々との挨拶や情報交換の場でもあり、地域コミュニティの維持に欠かせない存在でした。
地方自治体が抱える構造的課題
この閉店は、飯島町だけの問題ではなく、全国の地方都市が直面する課題の縮図です。
高齢化による移動困難、過疎化による購買力の低下、小規模事業者の後継者不足などが重なり、同様の閉店が各地で起きています。
地域づくりに求められる新たな視点
移動販売やコミュニティ支援の導入
今後は、移動販売車の導入や高齢者向けの宅配サービス、行政と住民が連携した買い物支援体制の構築が求められます。
また、地元の協同組合やNPOによる小規模店舗の共同運営なども可能性として検討され始めています。
長期的発展可能なモデルの設計
地域の特性を活かした長期的発展可能なビジネスモデルの構築が不可欠です。
例えば、福祉施設との連携、地産地消の取り組み、少人数でも採算が取れるミニスーパーの設計など、創意工夫が求められています。
地域の未来を支えるために必要な行動とは
エーコープ飯島店の閉店は、生活の利便性だけでなく、地域の連帯感や安全ネットワークにまで影響を及ぼしています。
今後、自治体や住民、民間事業者が一体となり、課題をチャンスに変える取り組みが急務です。
地域の声に耳を傾け、温かいまちづくりを進めることが、地方再生のカギとなるでしょう。
まとめ
- 長野県飯島町の中心部にあったスーパーが閉店しました。
- 経営難や社長の健康問題など複数の要因が背景にあります。
- 高齢者の買い物環境が著しく悪化しています。
- 飯島町は対策チームを設置し、対応策を検討中です。
- 地域スーパーの役割は単なる商業施設にとどまりません。
- 今後の地域づくりには住民参加型の支援が必要です。
