美容業界に、かつてないほどの逆風が吹き荒れています。東京商工リサーチの最新調査により、美容業の倒産件数が過去20年間で最多の120件に達したことが判明しました。物価高や人件費の高騰が経営を圧迫する一方で、多くの店舗が「客離れ」を恐れて価格転嫁に踏み切れないという、深刻なジレンマに陥っています。なぜ、私たちの身近にある美容室がこれほどまでに追い詰められているのでしょうか。お気に入りのお店が突然なくなってしまう……そんな不安をあなたも感じたことはありませんか?本記事では、業界を襲う危機の本質に迫ります。
- 美容業の年間倒産件数が120件に達し、過去20年間で最多を記録
- 倒産原因の約8割が「販売不振」であり、特に小規模店舗が深刻な状況
- 水道光熱費や備品代の上昇分を「価格転嫁」できない経営構造の限界
- コロナ禍を経た「来店サイクルの長期化」が売上に直撃している
1. 概要(何が起きたか)
東京商工リサーチの調査によると、2025年(昨年)の美容業における倒産件数は前年比5.2%増の120件となりました。これは比較可能な過去20年間で最も多い数字です。特に目立つのは、負債額が比較的少額な個人経営や小規模サロンの行き詰まりです。
華やかなイメージのある美容業界ですが、その裏側ではキャッシュフローが回らなくなり、ひっそりと幕を閉じる店舗が急増しているというショッキングな実態が明らかになりました。
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2. 発生の背景・原因
倒産原因の8割を占めるのは「販売不振」です。これには複数の要因が重なっています。
まず、店舗数の過剰な乱立です。コンビニエンスストアの数倍とも言われる美容室同士で限られた客を奪い合っており、新規顧客の獲得コストが年々上昇しています。そこへ追い打ちをかけたのが、材料費やエネルギー価格の高騰です。シャンプーや薬剤、タオルを乾かすための電気・ガス代、そして最低賃金の上昇に伴う人件費増が、経営を根本から蝕んでいます。
3. 関係者の動向・コメント
業界関係者からは、悲痛な声が上がっています。「コストが上がっているのは分かっているが、値上げをすれば隣の安い店に客が流れてしまう」という恐怖心が、多くの経営者を縛り付けています。
また、コロナ禍を経て消費者の行動変容も定着しました。これまでは「1ヶ月に1回」通っていた客が「1.5ヶ月〜2ヶ月に1回」と来店スパンを延ばすようになり、1人あたりの年間来店回数が減少。これが積もり積もって大きな売上減につながっています。
4. 被害状況や金額・人数
今回の120件という数字は、あくまで法的整理(倒産)に至った件数です。実際には、倒産の手続きすら取らずにひっそりと廃業する「休廃業・解散」はこの数倍にのぼると見られています。
被害を被るのは経営者だけではありません。そこで働いていた美容師たちの雇用が失われ、長年通っていた顧客は「美容室難民」となる事態が発生しています。特に地域密着型の店舗が消えることで、高齢者などの移動が困難な層への影響も懸念されます。
5. 行政・警察・企業の対応
現在、中小企業庁や自治体による経営相談などの支援策は存在しますが、美容業界特有の「過剰競争」という構造的な問題に対し、直接的な解決策を提示するのは難しい状況です。
一方で、大手チェーンなどはDX(デジタルトランスフォーメーション)を導入し、予約管理の効率化や物販(シャンプー等の販売)の強化で利益率を高める動きを見せています。しかし、こうした設備投資ができない小規模店舗との格差は広がる一方です。
6. 専門家の見解や分析
経済アナリストは、「美容業界のビジネスモデルが曲がり角に来ている」と分析します。これまでの『安さ』や『立地』だけで勝負するモデルは、コスト高騰局面では真っ先に破綻します。
専門家によれば、今後は「高くても通いたい」と思われる付加価値の提供、あるいは特定の髪悩みへの特化など、明確な差別化が生存の絶対条件になると指摘しています。価格転嫁ができないのではなく、「価格転嫁できるだけの理由を作れていない」という厳しい視点も向けられています。
7. SNS・世間の反応
SNS上では、ユーザーからさまざまな声が寄せられています。「行きつけの店が値上げしても通い続けたい」という応援派がいる一方で、「これ以上カット料金が上がると、セルフカットや安いQBハウス的な店に変えざるを得ない」という切実な家計事情を訴える声も目立ちます。
また、現役の美容師からは「給料が上がらないのに仕事だけがハードになっている。倒産が増えるのも納得」といった、労働環境の過酷さを嘆く投稿も散見されます。
8. 今後の見通し・影響
2026年以降も、この「淘汰の時代」は続くと予想されます。特にゼロゼロ融資の返済が本格化している中、自力で利益を出せない店舗の退場は避けられないでしょう。
しかし、これは業界全体の健全化(適正価格への移行)に向けた痛みの過程であるとも言えます。生き残った店舗は、適切な利益を確保しながらスタッフの待遇を改善し、より質の高いサービスを提供する形へと進化していくことが期待されます。
- Q. なぜ美容室は値上げがしにくいのですか?
- A. コンビニの数倍と言われるほど店舗数が多く、少しの値上げでも近隣の競合店へ顧客が流出してしまうリスクが非常に高いためです。
- Q. 倒産するのはどのようなお店が多いですか?
- A. 主に個人経営やスタッフ数名の小規模な店舗です。資金力や集客力、交渉力が弱いため、物価高の影響をダイレクトに受けてしまいます。
- Q. 美容室の来店サイクルが長くなっているのはなぜ?
- A. 在宅ワークの定着や、生活防衛意識の高まりにより、カットやカラーの頻度を抑える消費者が増えていることが要因です。
美容室の倒産が過去最多を更新したというニュースは、単なる一業界の問題ではなく、日本経済全体の「物価高と賃金」の歪みを象徴しています。コストが上がっても価格を上げられないという呪縛を打破するには、経営努力だけでなく、私たち消費者の「サービスの質に対する適正な対価」への理解も必要かもしれません。
あなたが応援したいと思うサロンがあるなら、そのお店の価値を再確認し、支えていく姿勢が、地域の美容文化を守ることにつながるはずです。




