日本最大級の機関投資家である農林中央金庫(農林中金)が2024年度決算で、過去最大となる1兆8078億円の最終赤字を計上したことが明らかになりました。
米国債をはじめとする外国債券の含み損が主因で、金利上昇局面での運用戦略の見直しを迫られる形となった。
一方、2025年度は黒字転換を見込んでおり、ポートフォリオの再構築による収益改善を目指しています。
- 事案: 農林中金が2024年度で1兆8078億円の最終赤字を計上
- 発生時期: 2024年度決算(2024年4月〜2025年3月)
- 主要因: 米国債など外国債券の含み損拡大
- 規模: 過去最大の赤字額
- 注目理由: 日本最大級機関投資家の運用戦略転換点
◉ 農林中央金庫赤字の詳細分析

▶赤字の構造と背景
農林中金の2024年度最終赤字1兆8078億円は、主に有価証券関係損失によるものだった。
同金庫は従来、低金利環境下で収益確保のため、米国債や欧州債券などの外国債券投資を積極的に展開してきました。
しかし、2022年以降の世界的な金利上昇により、これらの債券価格が大幅に下落。特に米連邦準備理事会(FED)の積極的な利上げ政策により、米国債の含み損が急拡大しました。
- 2020-2021年: 低金利環境下で外国債券投資を拡大
- 2022年春: 各国中央銀行が利上げ開始
- 2023年: 含み損が徐々に拡大するも様子見継続
- 2024年: 損失確定売りを実施、大幅赤字計上
- 2025年: ポートフォリオ再構築により黒字転換見通し
◉ 背景・要因分析
▶低金利政策下での投資戦略
農林中金の外国債券投資拡大は、日本の長期にわたる低金利政策が背景にある。
国内での運用先が限られる中、より高い利回りを求めて海外投資にシフトしたのは同金庫だけでなく、多くの金融機関に共通する戦略だった。
項目 | 2019年度 | 2024年度 | 変化 |
---|---|---|---|
外国債券残高 | 約20兆円 | 約15兆円 | ▲5兆円 |
国内債券比率 | 45% | 55% | +10pt |
外国債券比率 | 55% | 45% | ▲10pt |
▶金利リスク管理の課題
同金庫の今回の損失は、金利リスクヘッジの不十分さを浮き彫りにした。長期間の低金利環境に慣れ親しんだ結果、急激な金利上昇に対する備えが不足していたとの指摘もある。
◉ 主要損失要因
▶農林中央金庫が、何故1兆8000億円もの赤字?
農林中金の巨額赤字の背景には、以下の要因が複合的に作用した:
- 米国10年債利回りが1.5%から4.5%超まで上昇
- 欧州債券も同様に利回り上昇で価格下落
- 為替ヘッジコストの増大
- 損失確定売りによる実現損失
▶経営陣の対応と判断
農林中金は記者会見で「金利上昇局面での運用戦略の見直しが必要だった。
今回の損失処理により、健全な経営基盤の再構築を図る」と説明した。
- ✅ 外国債券残高の大幅圧縮
- ✅ 国内投資比率の引き上げ
- ✅ リスク管理体制の強化
- ✅ 新たな収益源の開拓
◉ 売却までの対応経緯

▶損失処理の決断プロセス
同金庫は2024年前半から段階的に外国債券の売却を進めていた。当初は「一時的な含み損」として様子見の姿勢を取っていたが、金利上昇トレンドが長期化すると判断し、年度内での損失確定に踏み切った。
▶🔁対応フロー
含み損拡大の認識
理事会での検討 段階的売却開始 大量売却実施 損失確定
◉ FAQ
- なぜこれほど大きな損失が発生したのですか?
-
長期間の低金利環境下で外国債券投資を拡大していたところ、急激な金利上昇により債券価格が大幅下落したためです。
- 農林中金の経営は大丈夫ですか?
-
資本基盤は維持されており、2025年度は黒字転換を見込んでいます。
ただし運用戦略の大幅見直しが必要です。 - 他の金融機関にも影響はありますか?
-
外国債券投資を行っている多くの金融機関で同様の含み損が発生している可能性があります。
- 預金者や組合員への影響は?
-
直接的な預金への影響はありませんが、今後の金利や手数料体系に影響する可能性があります。
- 今後の投資戦略はどう変わりますか?
-
外国債券比率を下げ、国内投資や多様な資産への分散投資を進める方針です。
◉ まとめ・教訓
金融機関の責任と課題
今回の農林中金の巨額赤字は、長期低金利環境下でのリスク管理の重要性を改めて示した。同金庫だけでなく、多くの金融機関が直面する構造的課題でもある。
今後の改善策
- 資産構成の多様化 – 債券以外の投資先拡大
- 金利リスクヘッジ – デリバティブ活用の拡充
- ストレステスト – 金利上昇シナリオでの定期検証
- 運用人材育成 – 高度な金融技術者の確保
🖋 情感的締めくくり
一兆八千億円という数字の重み。それは単なる会計上の損失を超えて、長きにわたる低金利時代の終焉を告げる鐘の音のようでもある。
農林中金が歩んできた道のりは、多くの金融機関が直面する現実の縮図でもあった。時代の転換点に立つ今、真の金融力が問われている。