10億円の売上が数年で崩壊?特需に依存した企業の恐ろしい末路

当ページのリンクには広告が含まれています。
企業倒産ニュースをイメージしたネイビーカラーの都市背景ビジュアル

「医療や健診は景気に左右されにくい」「PCR検査で大きく売上を伸ばした企業なら経営基盤も強い」――そんな印象を持つ人もいるかもしれません。

しかし、鳥取県鳥取市で企業向けの巡回健診や内科クリニックを展開していた一般財団法人いなば財団が、2026年8月5日に鳥取地方裁判所から破産開始決定を受けました。負債総額は約1億9000万円です。

背景には、クリニックなどの稼働率を維持できず採算面で苦戦していたことに加え、関連会社の経営悪化がありました。

さらにグループでは、PCR検査需要で一時10億円の売上高を計上した有限会社エフエムエルサービスや、山陰で「呉竹鮨」などを運営していた株式会社くれたけも経営が行き詰まり、グループを巻き込む連鎖倒産へと発展しています。

point

・いなば財団が負債約1億9000万円で破産開始決定
・巡回健診と内科クリニックの採算悪化が背景
・関連会社はPCR特需終了後に売上高が急減
・呉竹鮨などを運営する会社も連鎖する形で経営破綻
・医療、検査、飲食という異業種を抱えるグループ経営のリスクが表面化
・特需終了を見越した収益構造の再構築が重要だった可能性

この記事で得られる情報

いなば財団が破産開始決定

今回の破産は、医療・健診事業そのものだけでなく、グループ企業間の経営悪化が連鎖した事例として注目されます。

まず、一般財団法人いなば財団について、現在確認できる基本情報を整理します。

基本情報チェックリスト

☑ 法人名:一般財団法人いなば財団

☑ 所在地:鳥取県鳥取市千代水1丁目156

☑ 設立:2011年4月22日

☑ 主な事業:企業向け巡回健診、内科クリニック運営

☑ 運営施設:メディカル健診センター米子内科クリニック

☑ 破産開始決定:2026年8月5日

☑ 管轄:鳥取地方裁判所

☑ 負債総額:約1億9000万円

信用調査会社の発表によると、いなば財団は企業を対象とした巡回健診を手掛けるほか、2011年8月には「メディカル健診センター米子内科クリニック」を開院し、事業を拡大していました。

一方で、十分な稼働率を維持できず、近年は採算面で厳しい状態が続いていたとされています。

破産までの経緯を時系列で整理

今回の破産を理解するには、いなば財団だけを見るのではなく、エフエムエルサービスや飲食事業を手掛けるくれたけを含めたグループ全体の動きを確認する必要があります。

特に大きな転換点となったのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴うPCR検査需要の急増と、その後の急速な需要消失でした。

時系列フロー

1995年7月 有限会社エフエムエルサービス設立

2011年4月 一般財団法人いなば財団設立

2011年8月 メディカル健診センター米子内科クリニック開院

2017年7月 株式会社くれたけ設立

2017年9月期 エフエムエルサービスが売上高11億2000万円を計上

2018年1月 調剤薬局事業を関連会社へ移管

2019年9月期 エフエムエルサービスの売上高が2億9000万円まで減少

2022年9月期 PCR検査需要などにより売上高7億円まで回復

2023年9月期 売上高10億円を計上

2024年9月期 PCR検査売上の減少で売上高4億5000万円へ急減

2024年6月期 くれたけは売上高4億円を計上する一方、赤字が続く

2025年9月期 エフエムエルサービスの売上高が2億9500万円まで低下し438万円の赤字

2026年7月末 呉竹鮨などで突然の休業・経営破綻が表面化

2026年8月5日 いなば財団が鳥取地方裁判所から破産開始決定

こうして見ると、グループの経営環境が一夜にして悪化したわけではなく、複数年にわたる売上構造の変化があったことが分かります。

PCR特需で10億円から2億9500万円へ

グループの経営を考えるうえで特に注目されるのが、有限会社エフエムエルサービスの売上高の大きな変動です。

臨床検査などを手掛けていた同社は、新型コロナウイルス感染拡大によってPCR検査需要が急増したことで、一時的に業績を大きく回復させました。

決算期 売上高 主な状況
2017年9月期 11億2000万円 過去最高の売上高
2019年9月期 2億9000万円 調剤薬局事業移管後に減少
2022年9月期 7億円 PCR検査需要で回復
2023年9月期 10億円 PCR需要や補助金などが寄与
2024年9月期 4億5000万円 PCR検査売上の減少
2025年9月期 2億9500万円 PCR売上がなくなり438万円の赤字

2023年9月期の10億円から2025年9月期の2億9500万円まで、わずか2期で売上高は約7億円減少しています。

つまり問題は単純な「売上減少」ではなく、コロナ禍という特殊な環境で生まれた需要が消滅した後、それに代わる収益を十分確保できなかった点にあったと考えられます。

PCR特需は永続的な市場ではなかった

PCR検査は感染拡大期には社会的に非常に大きな需要がありましたが、感染状況や制度が変われば需要が急減する性質を持っていました。

そのため、特需による売上を通常時の売上と同じように考えることにはリスクがあります。

公表された数字を見る限り、エフエムエルサービスではPCR検査需要の縮小が業績へ極めて大きな影響を与えたことがうかがえます。

いなば財団はなぜ経営が悪化したのか

一方、いなば財団ではPCR検査とは別に、巡回健診やクリニック運営そのものの採算性が課題になっていました。

報道された情報では、稼働率を十分維持できず、近年は採算面で苦戦していたとされています。

健診・クリニックの稼働率低下

医療施設や健診事業では、医療スタッフや施設など一定の固定費が必要になるため、利用者や受診件数が想定を下回れば採算が悪化しやすくなります。

いなば財団について詳しい費用構造は公表されていませんが、稼働率を維持できなかったことが経営上の負担になったとみられています。

関連会社の経営不振も影響

さらに、グループ企業のエフエムエルサービスなどの経営不振も影響しました。

グループ企業の場合、一社の業績悪化が資金面や取引関係を通じて別法人へ波及することがあります。

今回も単独法人だけの問題ではなく、グループ全体の業況悪化が最終的ないなば財団の事業継続断念につながったとされています。

「呉竹鮨」も突然閉業した背景

今回の連鎖倒産でもう一つ大きな注目を集めたのが、山陰で飲食店を展開していた株式会社くれたけです。

同社は「呉竹鮨松江本店」「呉竹鮨鳥取店」をはじめ、焼肉、うどん、中華料理、精肉販売など幅広い食関連事業を展開していました。

公式サイトでも、山陰地方で飲食店や精肉事業を展開し、グループとして検査、クリニック、調剤薬局など幅広い事業を手掛けていたことが案内されていました。

売上高4億円でも赤字が続く

くれたけは2024年6月期に売上高4億円を計上していました。

しかし、売上規模だけでは経営の健全性を判断できません。同社では赤字計上が続き、店舗の集客低下に加えて食材価格の上昇が収益を圧迫していました。

さらに、上昇した仕入れコストを販売価格へ十分に転嫁することが難しく、不採算店舗の閉鎖などによる経営改善を進めたものの、業況の改善には至らなかったとされています。

前日まで営業していた店舗が突然休業

今回の経営破綻を象徴する出来事となったのが、呉竹鮨松江本店の突然の休業です。

報道によると、店舗は直前まで通常営業していましたが、その後「臨時休業」の貼り紙が掲示され、従業員にも突然破産の話が伝えられたとされています。

長年利用していた客だけでなく、従業員や納入業者にとっても、急な事態だったことがうかがえます。

3法人に共通する経営リスク

いなば財団、エフエムエルサービス、くれたけは事業内容こそ異なりますが、公表された経営悪化の背景を整理すると、いくつかの共通したリスクが浮かび上がります。

特に「需要の変化」「採算性」「グループ企業間の影響」が重要なポイントです。

法人 主な事業 公表された主な経営課題
いなば財団 巡回健診・クリニック 稼働率低迷、採算悪化、関連会社の経営不振
エフエムエルサービス 臨床検査など PCR特需終了、検査件数減少、資金繰り悪化
くれたけ 寿司・焼肉など飲食事業 集客低下、食材高、価格転嫁の遅れ、赤字継続

異なる業種であっても、需要が減る一方で固定費や仕入れ費用を十分に減らせなければ、利益と手元資金は圧迫されます。

さらにグループ企業間で資金面の関係が深い場合、一社の経営悪化が別会社へ波及する「連鎖」のリスクも高まります。

現場や地域への影響は

医療・健診と飲食という地域住民に身近な事業を展開していたグループだけに、破産による影響は法人の財務問題だけにとどまりません。

従業員の雇用、取引先への支払い、医療・健診サービスの利用者、店舗を利用していた地域住民などへの影響も今後の焦点となります。

経営上の一般的な見方
一時的な特需で売上が急拡大した企業では、需要が通常水準へ戻る前に固定費や事業規模を調整できるかが重要になります。また、複数企業を抱えるグループでは、一社への資金支援が別会社の財務余力を低下させないよう、法人ごとの収益性と資金状況を継続的に把握することが重要です。

ネット上で注目されやすい点

・PCR検査で10億円まで伸びた売上が急減したこと

・地域で知られた呉竹鮨が突然休業したこと

・医療、検査、飲食へ経営悪化が連鎖したこと

・従業員や取引先、利用者への今後の影響

FAQ

Q1:いなば財団は何をしていた法人ですか?
A1:企業向けの巡回健診を行うほか、「メディカル健診センター米子内科クリニック」を運営していました。

Q2:いつ破産しましたか?
A2:2026年8月5日に鳥取地方裁判所から破産開始決定を受けました。

Q3:いなば財団の負債総額はいくらですか?
A3:約1億9000万円とされています。

Q4:エフエムエルサービスはなぜ業績が悪化したのですか?
A4:PCR検査需要の終了による売上減少や検査件数の減少などが影響し、2025年9月期には売上高が2億9500万円まで落ち込みました。

Q5:呉竹鮨はなぜ閉店したのですか?
A5:運営会社では集客率の低下や食材価格上昇、価格転嫁の遅れなどで赤字が続き、不採算店舗の閉鎖などを進めましたが改善に至らず、関連会社に連鎖する形で経営破綻しました。

Q6:PCR検査で売上10億円あったのに、なぜ経営が厳しくなったのですか?
A6:10億円を計上した2023年9月期にはPCR検査需要などが業績を押し上げていました。その需要がなくなり、2025年9月期には2億9500万円まで売上高が低下したことが大きく影響しています。

倒産回避の可能性はあったのか

今回のグループでは、PCR特需の終了、健診・クリニックの稼働率低迷、飲食店の集客低下とコスト上昇など、それぞれ異なる問題が同時進行していました。

報道された情報の範囲から、当時取り得た可能性のある対応を考えてみます。

倒産回避のポイント

・PCR特需終了を前提とした縮小計画を早期に準備する
・法人、店舗、事業単位で採算性を厳しく管理する
・不採算事業の縮小や撤退をより早い段階で検討する
・グループ企業間の資金支援に一定の基準を設ける
・資金繰り悪化前に金融機関や支援機関へ相談する

PCR特需を通常需要と切り離して考える

エフエムエルサービスでは、2023年9月期に10億円だった売上高が、2025年9月期には2億9500万円まで減少しています。

PCR検査のように社会状況によって急増した需要については、特需終了後の売上を複数のケースで予測し、人員や固定費、設備などを段階的に調整する方法が考えられます。

需要が高い段階から「PCR売上がなくなった場合」を想定した事業計画を準備していれば、急激な収益悪化への対応時間を確保できた可能性があります。

事業ごとの採算管理を強化する

医療、検査、調剤、飲食など幅広い事業を抱えることは、収益源を分散できるメリットがある一方、採算の悪い事業を把握しにくくなるリスクもあります。

巡回健診、クリニック、検査、飲食店舗などについて、事業単位で利益とキャッシュフローを把握し、撤退基準を明確にすることが重要だったと考えられます。

飲食事業では価格転嫁と店舗整理を早める

くれたけでは食材価格の上昇を十分に販売価格へ転嫁できなかったことが、経営を圧迫した要因の一つとされています。

値上げには客離れのリスクがありますが、原価上昇を吸収し続ければ、売上があっても利益が残らない状態になりかねません。

商品ごとの原価率を確認しながら段階的な価格改定を行い、不採算店舗について早期に縮小・撤退することで、資金流出を抑えられた可能性があります。

グループ内の資金移動を慎重に管理する

報道では、エフエムエルサービスで関連会社への貸付金が増加し、資金繰りが悪化したとされています。

グループ企業への支援は事業継続のため必要になる場合がありますが、支援する側の資金余力まで失えば、複数法人が同時に経営危機へ陥る可能性があります。

貸付額の上限や回収計画を設けるなど、グループ全体で資金管理を徹底することが重要だったと考えられます。

金融機関や支援機関へ早期に相談する

資金繰りが深刻化する前であれば、金融機関や税理士、中小企業活性化協議会などへ相談し、返済条件の見直しや事業整理、事業譲渡、スポンサー探索などを検討できる場合があります。

経営危機が進むほど選択肢は少なくなるため、売上減少が明確になった時点で外部支援を求めることも重要な選択肢です。

倒産回避策の優先順位

今回のように複数事業の業績悪化が重なった場合、単純に売上を増やすだけではなく、まず資金流出を抑える必要があります。

公表された経営悪化の要因をもとに、考えられる対策を優先順位別に整理します。

優先度 必要だったと考えられる対策 期待される効果
最優先 法人別・事業別の資金繰りを把握 資金不足の時期と原因を早期発見
グループ内貸付や資金支援の見直し 経営悪化の連鎖を抑える
不採算事業・店舗の早期整理 固定費と毎月の資金流出を削減
PCR特需終了後を想定した縮小計画 急激な売上減少に対応
飲食事業の価格改定と原価管理 利益率の改善
中長期 安定需要のある収益源を育成 特定市場への依存度を低下

もちろん、これらの対策を講じていれば、必ず破産を回避できたと断定することはできません。

各法人の詳しい財務状況や資金調達条件、金融機関との交渉状況などは公表情報だけでは分からないため、ここで示した内容は報道された事実から考えられる選択肢です。

まとめと今後の展望

一般財団法人いなば財団の破産とグループ企業の経営破綻は、単純な一社の経営不振だけでは説明できません。

健診・クリニックの稼働率低迷、PCR特需の終了、飲食店の集客低下と食材高、そしてグループ内での経営悪化の波及が重なった事例といえます。

今回の事例から見える3つの教訓

・特需による売上を通常時の実力と混同しない

・赤字事業や不採算店舗への対応を先送りしない

・グループ企業間の資金支援が連鎖リスクにならないよう管理する

社会への警鐘

2023年9月期に売上高10億円を計上した企業が、その後わずか2期で3億円を下回る水準まで売上を落とした事実は、企業の売上規模だけを見ても経営の安定性は判断できないことを示しています。

特需が終わった後に何を残せるのか。そして、市場が変化したときにどれだけ早く事業規模を調整できるのか。今回の連鎖倒産は、業種を問わず多くの企業に共通する課題を浮き彫りにしたといえるでしょう。

最後に

地域の健康を支える健診やクリニック、そして人々が食事を楽しんできた寿司店。事業内容は違っても、その場所には従業員や取引先、利用者との長年のつながりがありました。

とりわけ、前日まで営業していた店が突然休業する光景は、企業の経営問題が数字だけでは終わらないことを感じさせます。

一時の好調を「これからも続く日常」と考えず、環境が変わったときの備えをどこまで持てるのか。今回の連鎖倒産から、あなたはどのような教訓を感じるでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

PR

この記事で得られる情報