選ばれた株を装うLINE投資詐欺で、1億8400万円被害

「選ばれた人だけが買える株」という言葉に心が動いたことはありませんか。千葉県で起きた今回の事件は、多くの人が抱える「一攫千金」への欲望を巧みに利用した投資詐欺でした。

市川市に住む73歳の男性は、インターネット広告をきっかけにLINEへと誘導され、1億8400万円もの大金を失いました。AI分析という言葉で信頼を装った詐欺師の手口は、まるで用意周到なシナリオのように進行していったのです。

この記事では、事件の全貌を追いながら、LINE投資詐欺が広がる背景と社会的影響を整理します。さらに、同じ手口から身を守るための知識や、今後の制度的対応の方向性についても解説します。

2025年5月 市川市で何が起きたのか？

事件の発端は、被害男性がネットで目にした「投資AI」の広告でした。リンクをクリックすると、LINEアカウントの追加ページに誘導され、そこから詐欺師との接触が始まります。

男性は「選ばれた人だけが買える株」という甘い言葉に引き込まれ、やり取りの中で繰り返し「今投資すれば必ず利益が出る」と説得されました。結果、数回に分けて自らの貯金や事業資金を振り込み、総額は1億8400万円に達しました。

日時	出来事	金額
2025年5月上旬	ネット広告をクリック、LINE登録	–
5月中旬	「選ばれた株」投資話を提示	–
5月下旬	初回送金	数千万円
6月初旬	追加送金	1億円超
最終的に	全額振込完了	約1億8400万円

すべては「AI株式分析」という言葉から始まった

近年、AIという言葉は「未来」「信頼」「効率化」といったポジティブなイメージを伴って使われることが多くあります。特に高齢者層にとって、AIは難解であると同時に「自分では理解できないがすごいもの」という信仰にも近い存在です。

男性が信じたのは単なる株ではなく、「AIが見つけた特別な株」でした。詐欺師は心理的な優越感を利用し、「あなたは選ばれた」と繰り返し強調することで、被害者の判断力を奪っていきました。

数字が示すLINE投資詐欺の深刻さ

警察庁の統計によれば、2024年以降「SNSを利用した投資詐欺」の認知件数は急増しています。特にLINEを入り口にしたケースが目立ち、被害額の平均は数百万円から数億円にまで及ぶケースもあります。

年度	LINE関連詐欺件数	被害総額（推定）
2022年	約2,100件	約200億円
2023年	約3,500件	約350億円
2024年	約5,200件	約500億円超
2025年（上半期）	すでに3,000件超	300億円規模

なぜ高齢者だけが突出して狙われるのか？

この種の詐欺が高齢者を中心に拡大している理由は大きく三つあります。

• デジタル技術への不慣れによる判断力の低下
• 「年金＋貯蓄」というまとまった資産を持つ層であること
• 「選ばれたい」「家族に残したい」という心理を突かれること

SNS拡散が生んだ新たな脅威

従来の詐欺は電話や郵便が中心でしたが、現代ではSNS広告やメッセージアプリを通じて無数のターゲットに一斉に仕掛けられます。被害者は「自分だけが声をかけられた」と思い込みますが、実際には数万人単位で同じメッセージが拡散されているのです。

政府・組織はどう動いたのか

警察庁はLINE社と協力し、投資関連を装った不審アカウントの早期検出に取り組んでいます。また金融庁も「SNS広告における金融商品取引法の適用範囲」を拡大し、無登録業者の摘発を強化しています。

一方で制度対応にはタイムラグがあり、詐欺師たちはその隙を突いて常に新しい手口を編み出しています。技術進化のスピードと規制の追随との間に、大きなギャップが存在しているのが現状です。

よくある質問と回答

「選ばれた」という言葉に惑わされない未来へ

今回の事件は、誰もが持つ「特別扱いされたい」という心理を突かれたものでした。しかしその裏側には、組織化された詐欺グループと膨大なデジタル広告の仕組みが潜んでいます。

数字はすでに危険を告げています。被害を減らすには、個人が知識を持つだけでなく、社会全体で「情報リテラシー」を底上げする必要があります。詐欺は弱者の問題ではなく、誰もが巻き込まれる可能性のある“時代の病”なのです。

「選ばれた」という言葉に心が揺らいだときこそ、自分自身を守る最大のチャンスです。冷静な一歩が未来の資産と尊厳を守ります。