「利回り7%」という魅力的な言葉に惹かれ、全国でおよそ4万人もの投資家が参加した不動産投資商品「みんなで大家さん」。
しかし今、その信頼が大きく揺らいでいます。
東京都と大阪府が相次いで行政指導を出し、投資家1000人以上が集団訴訟を準備。
かつて“安定型投資”とうたわれた仕組みの裏で、何が進行していたのでしょうか。
行政指導の概要と発端
10月14日、東京都と大阪府は「みんなで大家さん」を運営する事業者に対し、新たな行政指導を実施したと発表しました。
指導の対象となったのは、同社が投資家に提示した「第三者譲渡」という新しいスキーム。
これは、投資家が保有する出資口(1口100万円)を第三者に譲渡し、保険会社が全額を保証するという内容でした。
発覚の経緯と社会的反響
公式サイトでは「順調に開発が進んでいる」とする動画が公開されていましたが、実際に現地を訪れた記者によれば、工事はほぼ停止状態。
作業員の姿もなく、人の出入りも確認できなかったといいます。
この状況を受けて、行政側が「投資家への説明不足」として改善を求めた形です。
第三者譲渡スキームへの疑問
事業者側は「最善策」としてこの契約を提示しましたが、実際の第三者とは同社の100%子会社であることが判明。
弁護士は「訴訟回避のための時間稼ぎに見える」と指摘しています。
一度譲渡してしまえば、投資家は出資金への権利を失うおそれがあり、法的な懸念が高まっています。
被害金額と訴訟の規模
集団訴訟に参加する原告はすでに1000人を超え、請求総額は100億円規模に達する見通しです。
1人あたりの被害額は最大で2億円を超えるケースもあり、相談者の多くは高齢者。
弁護団は今月末から来月上旬にかけて提訴を予定しています。
- 東京都・大阪府が「みんなで大家さん」に行政指導
- 問題の「第三者譲渡」は実質的に子会社
- 投資家1000人超が集団訴訟、請求額100億円規模
- 現場では工事停止状態、信頼回復は遠い道のり
行政と企業側の応酬
行政側は「投資家に対して分かりやすい説明を行うよう」求める一方、事業者は「名指し公表は社会的制裁だ」と反発。
大阪府は特に、保険会社の名称や年率7%の根拠など、8項目の情報開示を要求しています。
専門家による見解
金融法に詳しい弁護士は、「行政指導は法的拘束力が弱いが、社会的信用の維持には極めて重要」と指摘。
また、金融ジャーナリストは「高利回りをうたう投資ほど、リスク説明が不十分になりやすい」と警鐘を鳴らしています。
SNS上の反応と世論の流れ
X(旧Twitter)では「やっぱり怪しいと思ってた」「年金代わりに投資した親が心配」といった投稿が相次いでいます。
一方で、「投資は自己責任とはいえ、説明不足は問題」といった冷静な意見も目立ちます。
今後の見通しと再発防止策
行政は今後も実態調査を進め、場合によっては業務改善命令や刑事告発に発展する可能性もあります。
また、金融庁による不動産クラウド投資のガイドライン改定も検討されており、業界全体の透明性が問われています。
Q1. 「みんなで大家さん」とはどんな仕組み?
A. 不動産開発への出資を小口化し、配当を受け取る形式の投資商品です。
Q2. 行政指導はどんな意味がある?
A. 法的拘束力はないものの、改善勧告として社会的影響は大きい措置です。
Q3. 訴訟はどの段階にある?
A. 原告団は今月末〜来月上旬の提訴を予定しており、被害額は100億円超に達します。
Q4. 投資家はどのように注意すべき?
A. 高利回りをうたう案件は、リスクや資金流用の有無を慎重に確認する必要があります。
「みんなで大家さん」問題は、投資と信頼の関係を改めて問い直す象徴的な事例となりました。
利回りの高さよりも、情報開示と説明責任を重視することが、投資社会の健全化につながるはずです。