「国内で1000店舗増」──コンビニ市場が“横ばい”と言われるなかでの大号令は、無謀か、それとも必然か。就任間もない新経営陣が掲げた構想は、SNSで賛否を巻き起こしました。
背景には、コスト高による値上げやブランド毀損イメージなど、ここ数年の逆風があります。実際、直近決算では国内コンビニ事業が減収減益となり、消費者の目は厳しさを増しました。それでもなお、“勝てる拡大”に踏み切る根拠があるのか──。
本稿では、1000店舗増の構想を「市場の飽和」「新フォーマットの収益性」「人材・FC」「投資計画」の四軸から分解。データと現場像を重ね、実現条件とリスク、そして読者ビジネスに効く学びまでを物語と体系で整理します。
- 物語:飽和市場で掲げた「1000店舗増」の意思決定の舞台裏
- 事実:2030年度までに国内で純増約1000店の方針、新型店舗の拡大で日販向上を狙う
- 構造:価格競争・人手不足・立地飽和という三重苦と、改装・DX・店内調理の三段構え
- 解決策:高日販フォーマット集中/改装3千億円級投資/FC支援と採用×教育の再設計
- 示唆:成熟市場での成長は「密度×質×回遊」の再設計がカギ──小売の普遍戦略へ
“飽和”と呼ばれる市場で、なぜ今「1000店舗増」なのか?
国内のコンビニ店舗数はおよそ5.5万店で横ばい推移。都市部の好立地は取り尽くされ、郊外は人手と採算の壁が立ちはだかります。そんな環境で同社は「2030年度までに国内で約1000店舗純増」を掲げました。狙いは、従来型の一律フォーマットではなく、新しい店舗形態(新標準店舗・店内調理・ベーカリー等)へポートフォリオを入れ替え、1店当たりの日販を底上げしてネットワーク全体の価値を上げることにあります。
すべては“ブランド再定義”から始まった
近年の値上げ局面や“上げ底”批判は、ブランドの信頼残高を目減りさせました。経営陣は「安さ一辺倒ではない、圧倒的においしい“適正価格”」という原点の再構築に舵を切り、コンビニ事業への資源集中を明言。総合から選択と集中へ──経営の物語そのものが変わり始めています。
数字が示す“飽和の中の成長余地”
国内コンビニ店舗数は直近でも約5万5736店(2024年末時点)で微増にとどまります。一方、2024年の全店売上は過去最高。量は伸びなくても、質の転換で市場はまだ拡張できる──このギャップこそ同社の勝算です。
指標 | 状況 | 示唆 |
---|---|---|
国内店舗数 | 約5.57万店で横ばい | 拡大余地は“質×密度”の再設計に |
全店売上(2024) | 過去最高を更新 | 高付加価値化・来店動機の再発明が奏功 |
国内1000店増(方針) | 2030年度までに純増約1000店 | 新標準店舗×改装投資×FC支援の三位一体 |
※店舗数は日本フランチャイズチェーン協会の公表データ等に基づく。
なぜ今“セブンだけが”大胆に出店できるのか?
対立軸は「価格×量のディスカウント」対「即食×鮮度×利便のプレミアム」。都市密度の高いエリアでは、朝・昼・夜・深夜の回転数が売上のレバーとなるため、店内調理・ベーカリー・出来立て惣菜など“鮮度を売る”設計が効きます。ここに本部オペとサプライの規模優位が重なれば、飽和市場でも“密度成長”は取り得る戦略です。
「実現性の核心はフォーマットの刷新と1店あたり生産性です。新標準店舗は従来比で商品日販が大幅改善とされ、そこに改装投資と採用・教育の刷新、FC収益のバランス見直しが噛み合えば、1000店増は“可能性”から“計画”へ近づきます。」
デジタル×店内オペが左右する“粗利と廃棄”の綱引き
アプリクーポンや時間帯割引、需要予測の精緻化により、“売切る力”が店舗粗利を押し上げます。店内調理のパン・ピザ等は、原価・人件費・在庫の三角バランスが難所ですが、改装と業務設計が整えば回転で取りにいける領域です。
組織はどう動くのか:改装3千億円とFC・人材の再設計
計画の土台は既存店の抜本的な改装投資(3千億円規模)と、採用・教育・シフト設計の再構築。FCの損益バランスを高日販フォーマットへ寄せ、物流と調理の同時最適で人件費を吸収する──ここまで踏み込めて初めて、1000店は“カタチ”になります。
実現条件の要点:①新標準店舗の粗利設計②改装の投資回収速度③人材確保と教育の平準化④FC収益配分の納得感⑤カニバリ回避の立地戦略
冒頭への呼応:成長は“数”よりも“質”の総量へ
1000という数字の大きさに目を奪われがちですが、本質はフォーマット刷新で1店あたりの価値を上げること。密度と質で面を塗り替えられるか──成熟市場の教科書は、ここから上書きされます。