世界中で導入が進んでいる中国製太陽光発電システムから、仕様書に記載されていない「不審な通信機器」が相次いで発見されています。
これらの機器を通じて遠隔操作による送電妨害やシステム破壊といったリスクが現実のものとして懸念されています。
この問題は単に一企業や技術の問題にとどまらず、各国のエネルギー政策や国家の安全保障にも大きく関わる重要な問題として注目されています。
この記事の主なポイントは次のとおりです。
- 不審な通信機器の目的
- 中国の太陽光発電のシェア
発覚した不審な通信機器の詳細

ロイター通信が報じたところによると、中国製の太陽光発電システムにおいて、製品仕様書に記載されていない通信機器が搭載されている事例が確認されました。
過去九か月の間に、複数の中国企業が製造した太陽光機器から、こうした通信機器が続々と発見されています。
米国のサイバーセキュリティ専門家はこの事案に関し「これは氷山の一角に過ぎず、世界中に既に導入されている何百万台もの中国製システムを考えれば、潜在的なリスクの規模は極めて大きい」と強い懸念を示しています。
不審な場所と機能

こうした不審な通信機器は、インバーターやバッテリーといった太陽光発電の要となる重要部品の内部から発見されました。
特にインバーターは、太陽光パネルで発電された直流電力を家庭や産業用に供給できる交流電力に変換する機能を持ち、送電網の中でも中核をなす存在です。
関係者によれば、通信機器は遠隔操作によって送電システムの安定性を損なう可能性があるとされ、「実質的に送電網を物理的に破壊しうる装置があらかじめ組み込まれていた」とする深刻な指摘も寄せられています。
潜在的な脅威の規模
太陽光発電は再生可能エネルギーの中心的存在として、現代の電力供給網に深く組み込まれています。
もしこうしたシステムが第三者によって遠隔操作されれば、送電網の広範な混乱や停電を引き起こす可能性があります。
このような脅威は単なる理論上のリスクにとどまらず、実際に日本を含めた各国の電力インフラに広範な影響を及ぼす恐れがあることから、経済安全保障の観点からも重要視されています。
太陽光発電における中国の支配力

太陽光発電市場での圧倒的シェア
国際エネルギー機関の統計によると、中国は太陽光パネルの原材料調達から製造、組み立て、輸出に至る全工程で世界シェアの8割以上を占めています。
このような支配力は、中国政府による補助金制度と大規模な生産体制、そして戦略的な価格政策によって確立されてきたものです。
欧州や日本、米国などの企業は、このような価格競争力を持つ中国企業に太刀打ちできず、太陽光発電機器の調達先を中国以外に切り替えることが難しい状況が続いています。
- 原材料から完成品までのサプライチェーンが中国国内で完結
- 国家補助金により、中国製品は30%以上の価格競争力を持つ
- 中国は世界需要の5倍以上の製造能力を保有
- 製造ノウハウと特許の大部分が中国企業に集中
依存関係がもたらすリスク

このような市場構造は、世界各国が脱炭素政策の中で進めてきたエネルギー転換を、事実上中国の製品供給に依存させる形になっています。
再生可能エネルギーの拡大に伴って、コスト面で優位な中国製品の導入が加速された結果、各国の電力 インフラが安全保障上のリスクを抱える構図が顕在化しています。
不審な通信機器の発見は、この依存構造の脆弱性を象徴する出来事として受け止められています。
各国は経済的な合理性と安全保障リスクとの間で、極めて難しい判断を迫られています。
各国と関係機関の反応と対応

米国の対応
米国エネルギー省は、太陽光発電に関わる新興技術に対するリスク評価を継続していますが、製造元からの十分な情報開示がなされていないとする課題を指摘しています。
情報の不透明さが、潜在的リスクの正確な評価を難しくしているとの見方が広がっています。
米下院の国土安全保障委員会の一部議員は「中国共産党は、通信ハッキングや遠隔操作など、あらゆる手段を使って我々のインフラを標的にしてくる可能性がある」として、警戒の必要性を強調しています。
中国側の主張
一方、在ワシントン中国大使館は「国家安全保障という名目で中国のインフラ関連製品を歪曲し、中傷する行為には反対する」との声明を発表しています。
中国政府は、これまでも一貫して自国製品が安全保障上の脅威になるという見方を否定しており、今回の指摘に対しても強く反論する姿勢を見せています。
まとめ
- 中国製太陽光設備から、不審な通信機器が発見されています。
- 仕様書にない機器が、危険性を高めています。
- 通信ハッキングや遠隔操作などのリスクがある。
- 中国は原材料調達から製造、輸出に至る全工程で世界シェアの8割以上を占めています。
- 安全保障の観点から、国ごとの対応が求められています。
- エネルギー分野での中国依存を見直す動きが、進んでいます。
