かつて日本中に1,800店舗を展開し、「居酒屋といえば養老乃瀧」と言われた時代がありました。しかし今ではその数は10分の1の約180店舗まで縮小。それでも同社は倒れることなく、むしろ近年は業績をV字回復させています。その原動力は、意外にも“居酒屋ではない事業”でした。
その舞台は、にぎわう歓楽街でもオフィス街でもなく、競馬場や大型施設の一角。唐揚げやポテトを武器にしたフードブースが、サラリーマンや観客の心を掴み、居酒屋事業とは異なる新しい収益源となっています。コロナ禍で居酒屋が壊滅的打撃を受けた際、この選択が会社を救いました。
この記事では、養老乃瀧グループが挑んだ「非・居酒屋事業」の全貌を掘り下げます。なぜ競馬場に唐揚げ店を？ 数字が示す成長の秘密とは？ そして居酒屋業界全体に与える未来の示唆まで、物語とデータを交えて解説します。
- 物語的要素：最盛期1800店舗から180店舗まで減少した養老乃瀧が、新事業で復活
- 事実データ：居酒屋売上が全体の75〜80％、非・居酒屋が25％を占めるまで成長
- 問題の構造：コロナ禍で居酒屋事業が壊滅的打撃、存続の危機
- 解決策：コントラクト事業に参入し、唐揚げ・ポテトなどで新たな顧客層を開拓
- 未来への示唆：飲食業界の生存戦略として「場内フード事業」の可能性を提示
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2021年、居酒屋が止まった日と新事業の始まり
コロナ禍による緊急事態宣言で、夜の街から人影が消えた2021年。養老乃瀧グループの売上はわずか52億円まで落ち込み、最盛期の192億円から大幅に減少しました。これは創業以来最大の危機といえます。
しかし同年、同社は「コントラクト事業」に本格的にシフト。競馬場や大型イベント施設でフードブースを展開し、居酒屋の強みである“濃い味付け”と“酒に合う料理”を武器に再出発しました。
| 年度 | 売上高 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 2019年度 | 約192億円 | 居酒屋業態が主力 |
| 2021年度 | 約52億円 | コロナ禍で大打撃 |
| 2023年度 | 約130億円 | 非・居酒屋事業で回復 |
すべては「居酒屋全盛期の記憶」から始まった
養老乃瀧が培ってきたのは、安くてボリュームがあり、酒に合う料理。そのDNAは、競馬場で販売される唐揚げやポテトにそのまま生きています。かつて居酒屋で数千万食を提供してきたノウハウが、新しい事業の武器となりました。
数字が示す事業構成の変化
現在の売上構成を見ると、居酒屋事業は全体の75〜80％を占めるものの、非・居酒屋事業が20〜25％に拡大しています。これは5年間で約30億円規模に成長した計算です。
「飲食業界は今後、居酒屋一本足打法では生き残れません。公共施設やイベント会場での『小型フード展開』は、低リスク・高回転の新しいモデルとして注目されています。」
養老乃瀧の挑戦が示す飲食業界の未来
かつての居酒屋王者は、姿を変えて再び立ち上がりました。衰退ではなく転換。養老乃瀧の物語は、飲食業界に「変わる勇気が未来を開く」という教訓を残しています。今後、私たちが競馬場やイベントで手にする唐揚げの一皿が、業界の生存戦略そのものを象徴する時代になるのかもしれません。
